Natural coral
天然珊瑚末精製法

高知の海が育んだ自然の色の美しさを伝えたい

天然珊瑚末精製法(てんねんさんごまつせいせいほう)

高知で活躍されている珊瑚職人さんの協力のもと、多様な色の珊瑚末の精製に取り組みました。
高知の風土が育んだ自然の色の美しさが伝わるように想いを込めて。

2015年いの紙の博物館で行った個展の中で、作品とあわせて高知の珊瑚から作った珊瑚末を展示しました。
その時出会った山﨑さんから、自宅にある珊瑚珠を寄付したいというお申し入れをいただきました。寄付していただいた珊瑚珠は、亡くなられたお父様坂東徹治郎氏が生前珊瑚職人をされていた時の、貴重な珊瑚であることを知りました。珊瑚を一粒一粒種類ごとに分けていると、お会いしたことのない徹次郎さんの息づかいをひしひしと感じることができました。
何年かけても、大切に絵具を作り絵を描くことで、高知の誇りをできるだけ多くの方に伝えていくことが、自分がにとってこれからの使命だと再認識しました。

珊瑚は美しい海のたまもの

日本で採取される宝石珊瑚にはアカ珊瑚・モモイロ珊瑚・ボケ珊瑚・シロ珊瑚などがあります。また、地中海などで採れるベニ珊瑚はオレンジ色が強い特徴を持っています。
高知の美しい海で育てられた珊瑚は高知を代表する宝です。しかしどんどん珊瑚が死んでいる現状があります。
一人でも多くの子どもたちが高知の誇りである珊瑚のことを知り、美しい海を守っていくために学び行動していくきっかけになればと考えています。


精製法

珊瑚職人さんの協力を得て、まず可能な限り珊瑚の破片を一粒一粒種類別に分類しました。
分類した珊瑚は鉄鉢で砕き、網目の細かいザルを使って粒子の細かい珊瑚末を抽出します。
さらに乳鉢でかなり砕いているため、鉄粉が混ざっていますが、この鉄粉は磁石で取り除きます。
次に珊瑚に付着した汚れを薬剤で洗浄します。続いて多めの水で洗い、粒子の細かさにより沈殿する時差を使った水簸分解(すいひぶんかい)を行います。
この手法をとることで、粒子の異なる粉末に分けることが可能です。
水簸分解をした珊瑚の粒子を完全に乾燥させた後、「色譜 日本画の色」を参考にし、市販で売られている濃口珊瑚末や薄口珊瑚末の色と比較してみました。
当初は市販の珊瑚末の色に近づけることを目標に研究していましたが、様々な種類の珊瑚で作ることにより
微妙な色味の珊瑚末を作ることができることの楽しみを知りました。
多くの時間をかけ協力してくださった珊瑚職人の皆様、ありがとうございました。

アカ珊瑚を選別する

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アカ珊瑚を選別する

鉄鉢で砕く

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鉄鉢で砕く

乳鉢で細かくすりつぶす

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乳鉢で細かくすりつぶす


磁石を使って鉄粉を除去する

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磁石を使って鉄粉を除去する

薬品で洗浄する

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薬品で洗浄する

水簸製法で粒子を分ける

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水簸製法で粒子を分ける

乾燥させ完成

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乾燥させ完成



「珊瑚の記憶」

4F 2014年

高知麻紙・岩絵具・自家製天然珊瑚末